Saturday 12 May 2018

ばっし!!

火曜日、親知らずを抜いた。ついに抜いた。

生えてきたなーと思ったのはもうだいぶ前のことだがそのまま放置していた。(上の2本は10年くらい前に抜いた。)それが3年前だったか、寝不足と疲れとストレスがたまっていた時に痛み始めた。痛いというよりは腫れている感じ。左、右の順に痛くなった。これが結局一週間ぐらい続いたんじゃなかったか。その時は抜くということは考えてはいなかった。

そしてこの春、3月、こどもが「イヤイヤ」で私も「イライラ」していたとき、それはやってきた。左側だけだったが、腫れ始めた。抵抗力が弱まり細菌が入ったのだ。3年前と同じだ。こうなると日常生活に支障が出てくる。2回目となりさすがに懲りて「これは抜こう」と思った。

いつもの歯科に行くと、ここでは抜けないと言われた。というのも左右ともに歯肉が被さっていて切開が必要だから、ということ。わかってはいたけど左右とも、となるとちょっと気持ちが変わってきた。これは覚悟が必要である。上の歯はいとも簡単に抜けたのに。これはいわゆる「手術」になる。

紹介状を書いてもらって大病院へ行くことになった。予約をとるのも一苦労だった。電話ではなくファックスでしか受け付けられない。そして予約確定の電話は大病院ではなくなんと紹介元からかかってきた。しかも1ヶ月先しか空いている日時がなかった。

というわけで1ヶ月間(いやそれ以上だったな)かけて覚悟を固め、そわそわしながら過ごして来たというわけだ。

抜歯当日。だいぶ緊張したが背に腹は変えられぬ。大病院なのでまず初診の受付で30分くらい要した。見たことも聞いたこともない「科」がたくさんある。(睡眠科なんて初めて聞いた。)

私がかかるのは「口腔外科」。私のように親知らずで悩む人、その他もっと重篤または別の類の歯科の問題をかかえる人たちがたくさんやって来るのだろう。

東京近辺の、歯科の問題を抱えるすべての人々。

そうやって周りの患者を見ると、不思議と親近感が湧いて来た。名前を呼ばれて入って行くと、これは驚いた。いわゆる歯医者の椅子(リクライニングできるやつ)が、20くらい?かそれ以上並んでいる。普通の歯科だったら4つか5つなのに。異様な光景だ。

担当は私よりも若いであろう男性医師だった。ここに勤めるということは相当優秀なのだろうなあと思った。話をしたあとで、レントゲン撮影のために地下まで行く。4階からわざわざ地下まで降りるのである。データがぽんぽん飛んで行くのだ。大病院はすごいなあ。

撮影後また戻り、話をして、きょうは左のみ抜く、ということになった。二ついっきに抜いたら食事もできなくなるとのこと。了承して、抜歯にのぞんだ。

だいぶ怖かったけど、出産に比べればなんてことないはずと思うとちょっと楽になった。麻酔は痛くなかった。注射器のながーい針が見えたのは怖かったが、チクっとさえも感じなかった。そのうちに舌と喉の奥ががしびれてきた。

そのあとは、もう、あとは野となれ山となれで、完全に「任せた」。もう考えないことにした。と言ってもいろいろ想像してしまう。ああ今歯肉を切っているんだろうなとか。抜こうと医師ががんばるのはよくわかった。ひっぱるだけではなくて、当該の歯以外のところは逆に押さえつけられる。

もうこれは「大きなかぶ」と同じなのである。うんとこしょ、どっこいしょ、である。早く抜けろよ、かぶ。

あまりに長いこと口を開けていたせいか、それとも緊張と恐怖のせいか、顎がガクガク震え始めた。震えとよぶには大きすぎる動き。止まらない。手で押さえようかと思ったが看護師と医師の手がその周辺をうろうろしているのでそれはできなかった。

早く抜けてくれ…

「もうすぐですからね」という声が聞こえ、しばらくして、どうやら抜けたらしいということがわかった。口のなかは血の味がする。きっと今頃血の海なのだろう。

こういう人を1日に何人も診る仕事ってのは、うーん、どんな感じなんでしょうね。いやもちろんそんなこと考えたのは抜歯後だいぶ経ってからで、その時はそんな余裕なんてなかったですが。

顔の上にかけられた紙が取られて、からだを起こし、抜けた歯を見せてもらった。歯肉つきの。ピンク色の歯肉がついている。肉だ。これは。スーパーでパックに入っているのとほぼ同じ色をしている。ああああ…

少し説明してもらって、というか説明がなくてもわかったが、これまで歯肉に隠れていた部分はものすごく汚れていた。はっきり言って黒い。なんと。この汚れを口のなかに抱えたまま何年間も生きていたとは。おぞましい。完全に歯が隠れている場合は問題ないが、少しでも出てしまうとそこから食べもののカスが入り汚れがどんどんたまっていくのだ。抜いてよかった、と思った。

麻酔が効いている間というのはもちろん感覚がないので、知らないうちに自分の舌を噛んでしまう。怖いなあ。口の周りや顎を触っても感覚がない。不思議だ。

薬をもらって、その日はおとなしく過ごした。痛みというか麻酔がなくなっていく感覚をじっとして味わわなくて良いように街をうろうろしながら帰った。

今、糸で縫ってあるのを来週抜く予定だ。

ところで「抜歯」も「抜糸」も「ばっし」なんですね。ああそうかと思いながら、歯科医師はどう区別をつけるのだろうと思っていたら「抜糸」のほうは「糸を抜く」という表現を使っていた。そりゃそうだね、やっぱり歯が優先ですよね。

ありがとうとカルボナーラ

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