三月も中旬になる。今週は大学の合格発表があり、教え子たちからの報せに喜んだり残念がったりという毎日だった。実際に訪ねてきてくれた子たちが何人もいて、勝因はなんだったか、とか、今後やりたいことなどをしばらく話した。
これは本当にざっくりした感覚だがこの14年間、高校生を見て思うのは、受験で最後にものをいうのは「明るさ」だ。精神的な強さと言ってもいいが、あえて、明るい顔をしているかどうか、と呼びたい。もちろん「もともと」の出来もあるが、それを生かせるかどうかは心の持ち方次第だ。具体的に言うと、よくないのは学校に来なくなるパターン。閉じこもると暗くなる。14年間、高校生を見てきて感じることである。
3年間ずっと世話をした生徒が訪ねてきてくれるのは本当に嬉しい。私自身も多く学んだ3年間だった。つい先日まで中学生みたいな顔をしていた人たちがこうやって巣立っていく。「とどまっているのは教員だけ」という、以前の同僚から聞いた言葉がまた思い出される。とどまっているのは教員だけなのだ。皆が確実に歳をとり、世の中は移り変わり、そこにはまた別の人生を抱えた新しい生徒がすでにやってきている。とどまっている側も成長せねば、と思う。
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暇さえあれば図書館に行き絵本を借りる。以前は土日に子と一緒に行っていたが、仕事への通り道なので平日の夕方にもひとりで借りて帰るようになった。寝る前に三冊読むのだが、新しい本があるほうが私も楽しいので、借りることは楽しみである。少し返して少し借りる感じ。
先日「きょうはなんのひ?」を借りてみた。すると、読み聞かせている間に涙が出そうになった。林明子さんのやわらかくて美しい絵のせいだろうか。最初のページの「いってきます」と言う「まみこ」の顔を見てうるっときた。そしてそのあとのおかあさんの絵をみているうちに涙がこみあげてくる。なんでだろう。ここ数日そのことを考えている。とても昭和のにおいのする家のなかの様子が、自分の幼少期を思い出させたのかもしれない。または心のどこかにこんなおかあさんが欲しかったという思いがあるのかもしれないし自分の母に似たところを思い出したのかもしれない。なぜだか未だにわからないが、絵本の読み聞かせで泣けてしまうのは予測していなかった。