Wednesday 10 August 2011

ローマ・レポート バールについて

イタリアにはスターバックスが無い。
タリーズも、ドトールも、エクセなんとかも、無い。

必要が無いのである。

ではどこでコーヒーを飲むのか。

答えは「バール」。
(Barと書くのだが、アルファベットを書いたとおりに読むイタリア語では「バール」という発音になる。朝も昼も開いており、日本でいう「バー」とは違う。)

どこの街、道でも、少し探せばたいていすぐに見つかる。
いわゆるカフェですね。
朝は早くから開店している。

たいていのお客さんは、一週間のうち5日くらいはそこに足を運ぶような地元の人たちなので、注文するものはすでに決まっている場合が多い。

世間話をしながらパクパク食べて、「じゃ、よい一日を」といいながら出て行く。

私も、家の前のバールでは顔を覚えられているので、入ると「カプチーノね」と言われる。

たいてい、メニューというものは無い。
お客さんはいつもBuon giornoと言いながら入ってきて、
「カプチーノひとつ」とか
「カフェ・マキアートひとつ」とか
「エスプレッソひとつ」とか
それぞれに、カウンターに向かって注文する。

朝はこれに、コルネットなどの、日本で言うと甘い(デニッシュ)パンを注文する。
ペイストリーっていうんでしょうか。
パンとはだいぶ違う。

中に入っているものはあんずジャムだったりチョコレートだったりクリームだったり様々である。
ちなみに商品名なんてどこにも書かれていない。
適当に並べてあるだけだ。
どうやって見分けるのか。

店員に聞くしかない。

前述のとおり、いわゆる「メニュー」は無いことが多いのだ。


ところで、不安になりませんか、メニューが無いって。

私は初めて飛行機に乗ったときに「何になさいますか」と飲み物を聞かれて、答えに困った。
そもそも何があるのか聞かされてないんですけど、と。

しかも、知らない店に入る場合は、たいてい、値段が気になる。
メニューを見ないと、店に入るのを決断できない。

なんてことありませんか。

普通はそうなのだが、たとえばここで法外な値段を請求されることは(日本人だからといってナメられてだまされる場合を除いて)無い。

カプチーノは1ユーロ(110円くらい)
ペイストリーは80セント(90円くらい)

相場はこんな感じである。
というわけで、こんなに満足で暖かい朝ごはんが200円程度で食べられる。

もう、こんなのを知っちゃったらスターバックスのコーヒーなんて飲めない。
1杯で300円を超えるというのはいささかの異常さを感じずにはいられない。

事実、イタリアには1件もコーヒーチェーン店が無い。
チェーンのカフェが入ってきたとしても、営業が成り立たないのである。
個人が営業するバールがこんなに安くておいしいのだから、必要が無い。

たとえばコーヒーチェーン店で一番有名なスターバックス。
同じヨーロッパでも、イギリスでは結構流行っていたし、イタリアとどこか似た感じのするスペインにもスターバックスはあった。

でもここイタリアでは今のところ1件たりとも見かけたことが無い。
もしかしたらミラノあたりにはあるのかもしれないけど、首都ローマには無いようだ。

しかも人々はスターバックスが入ってきていないことを誇りにしている。
僕らには必要ないから、と。

そもそもファスト・フード店が少ない。
ローマにはマクドナルドとバーガーキングがそれぞれ2件あるが、まあそれくらいだ。



どこに行っても同じ味が手に入る、というのはチェーン店の利点。
マックのポテトが食べたいと思ったときにすぐ探して手に入るのは便利なことだ。

ただ、そこでしか手に入らない味と雰囲気と、なによりもそこにあふれる人情を求めて、人々が集うバールを見ていると、こういう場所の貴重さを感じる。

郷里で、家の近くにあった小さな店がちょうどこれに近い存在だったかもしれないと思いだす。
店主はたいていのお客さんの顔を知っている。
近所の奥さんが「豆腐はあるかいね」と言いながら入ってくる。
世間話をしながら「じゃまた」と帰っていく。
50円玉を握り締めて駄菓子を買いに通った20年前の記憶。

いろんなものが、どんどん便利になり、加速しすぎて、人と人とのつながりが薄くなっていく。


昨日、ボルゲーゼ公園でごろごろしていたら日傘を差した日本人女性が一人歩いていた。
(ちなみにイタリアで日傘を差しているのはたいてい日本人だけ。)
道に迷ったらしく、立ち止まった。

即座に i phoneを取り出し、調べ始めた。

嗚呼、こうやって便利な機器はコミュニケーションの場を奪っていくのだと思った。

そこで周りの人に聞くことで会話が生まれるのに!
周りに、生身の人間がいるのに!!
そこから恋が芽生えることだってあるかもしれないのに!!!

ま、極端な例ですかね。
私もいふぉーんとかいぱっどとか欲しいわけですし。

ともあれ、イタリアに行く機会のある人は、ぜひバールに立ち寄ってみてください。

ちなみに、バールで一人日本人が働いていたら面白いだろうなと思う。
日本と同じ接客態度でちょこまかハキハキと動いていたらきっとそこらじゅうで話題になるだろうなあ。
日本人の勤勉さは輝くだろうなあ、と。

さて、今日もいい天気です。
海にでも行きましょうかね。

ありがとうとカルボナーラ

 新学期スタート。 子が帰ってくる時間に家に人がいる、というこの幸せ。保育園は4時とか5時まで預けていたのでこんなことはなかったけど小学校は本当に「帰ってくる」ので誰かいないといけない。自分が仕事していてその時間に家でFが子を迎えてくれているというこの安心感は、あらためて、ほかの...