この夏休み、仕事からうんと離れて海の向こうで2週間過した。これだけ物理的な距離があると、ああこれでこそ休暇なのだ、と思える。同僚から届くメールも、"あいにく"日本語の使えないコンピュータを使っていたせいで全部読めなかった。ここまで来れば誰も絶対追ってこないなあ、そう思った。
ということはつまり、それほどまでに逃げたかったのである。4ヶ月間よく頑張ったと思う。しかしまだ半分も終っていない。4ヶ月が経過して、そこでやってきた夏休みというのはとても貴重な時間であった。
それにふさわしく、途轍もなく色々なことを考えている。
というのも、考える時間があるから。
1人で悶々とする時間があるから。
学生時代は考える時間ばかりがありすぎて、頭がパンクしそうになることもよくあった。だから早く仕事したいと思っていた。特に何でも良いから仕事して自立したかった。
昨夜会った友人が「考える時間が一秒も無いくらい働いている」と言っていた。9月からはまた自分もそうなるのだろう。
考える時間が必要なのだ。翌日のことも、寝る時間も起きる時間も気にせずにゆっくりと考える時間が。だから休暇は休暇として2週間くらいは持つべきだと思う。日本社会で働いているとそれが本当に難しい。別に、ただ休みたいからそういうことを言っているわけじゃない。
二日前に会った友人も言っていたが、休んでこそ生まれる成果というのがある。
友人曰く、日本では、スポーツの練習でも同じように、休まずコツコツ続けるのが良い結果を生むと一般的に考えられている。けれど欧米では、逆に一定の休憩が与えられる。休むことは練習に含まれるひとつの要素なのである。
だから日本のサラリーマンなんて文字通り、ノンストップ、フル稼働しているわけだ。季節を感じる暇も無い。少なくとも私にはそう見える。
「SですかMですか」
というような質問が日本人はとても好きなのだが(外国人の口からこの質問を未だに聞いたことが無い)、日本という国がそもそもマゾヒズム的国家なのだ。したがって国民もまたマゾだらけなのだ。
太平洋戦争については周りの国から何か言われればそのたびにペコペコ謝っている。60年経った今もまだ悪役である。「周りのひとたちゴメンナサイ」という姿勢がずーっと続いていて、周りの人たちは日本を責め続ける。
世界の約半分を支配していたイギリスがどこかで謝ってたりしたんだろうか。むしろ、「自分たちは利益をもたらした」と考えているんじゃないだろうか。
話が飛躍してしまった。
はり・灸や、脚ツボマッサージ、垢すりetcというような治療法は東洋ならではである。これは日本に限ったことではない。
「痛いからこそ効く」という考えが浸透している。痛みと同時に、悪いものを身体から取り除くという、この考えはたぶん昔から変わっていないんだろうと思う。
欧米の人にマッサージ(とくに肩もみ)をしてあげると、悲鳴をあげる場合が少なくない。弱いなあまったく、と思うが、そうではなくて、極度に刺激を与えることが身体に良い効果をもたらすとは考えられていない。
ほかに例をあげると、柔軟体操が苦手である。座って、足を伸ばしたまま、手を足の指につける、というお決まりのポーズがあるが、あれができない人が多い。「痛い」と感じたらすぐにやめてしまうので、そもそもそれを「体操」として認識していない。学校でやったりはしないのだろう。
また、シャワーを使って身体を洗うときに、いわゆるボディタオルを使わないという人に今まで何人か会った。身体は「こする」べきものではないのだ。指を使って洗う程度で、それ以上の刺激を与えない。垢すりなんて考えられないんじゃないだろうか。それとも西洋文化のどこかには存在するんだろうか。
それでも私は東洋人なので、痛くて気持ち良いマッサージは好きだしボディタオルも使うのだが。
仕事がつらいと
「つらくてこそ仕事だから」
「耐えてこその仕事だから」
とよく言うのだがこの辺をきくにつけ
「ああもうMまっしぐらだよなあ」
と思わずにはいられない。耐えること、我慢することが美とされてきた社会である。
例えば、自分より20歳以上年上の人に仕事について相談をするとたいていそういう答えが帰って来る。経験のある人は違うのだろう、しかしそれがすべてとも限らないのではないかと思う。例えば欧米の友達に相談すると決してそういう答えは返ってこない。
「やめれば」
この一言である。
休暇の話からこんなところまで来てしまった。「考える時間」がメインテーマであったはずなのだが。いや、論点は統一されているのかな。
三日間、昼夜逆転、これでもかというくらい怠惰な生活を送っていたのでこれからちょっと柔軟体操でもして掃除でもしようかと思う。
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