Saturday, 4 July 2015

10年前のJorge Ben Jor

「サンバ」という映画を見た。その中で主演のシャルロット・ゲンズブールが踊るシーンがあるのだが、そこで使われている曲を聴いて急に懐かしくなった。いつの間にか一緒に口ずさんでいた。
"Take it easy my brother Charlie"。
検索してみたら、Jorge Ben Jorという名前が目に入った。

あ、と心の中で声が出た。

かれこれ10年前の夏、まるまる1ヶ月をイタリアのフィレンツェで過ごした。4人でシェアするアパートに住んだ。クロアチアから来た姉弟、ブラジル人のアナ、それから私の4人。

「アンナ」ではなくて「アナ」と名乗る人にそれまで会ったことがなかったので、珍しいなと思った。
本当に、小麦色の肌の持ち主で、当時おそらく17歳とか18歳だったと思う。
最初の二週間は4人だったが、クロアチア人の2人は2週間で去ってしまったので、残りの時間はアナと私の2人で過ごした。その日会った変なイタリア人のこととか、色々話した。お互い、イタリアに慣れていなかったし、イタリア語は全然しゃべれなかったから、会話の手段は英語だった。

壊れそうなCDプレイヤーでアナがいつも聴いていたのはブラジルの音楽だった。CDと一緒によく歌っていた。私にとっては初めて聴く種類の音楽だった。

そのときのやり取りまでは覚えていないが、私もそれを気に入って、当時持っていたパソコンに取り込ませてもらったのだった。当時そのアーティストを知っていたわけではなかったのだが、アナのCDに書いてあったアーティストの名前をそのままデータに書いた。

Jorge Ben Jor


それから10年、もらったデータを焼いたCDはそのまま残っている。昨夜、あらためて聴いてみたらその中の1曲はTake it easy my brother Charlieだった。

彼女が今どこで何をしているか知らない。あの1ヶ月しか一緒に過ごしていないし、その後会ってもいない。

当時の、つまり2005年の7月のことを私は鮮明に記憶している。どこまでも高く青い空、市場のにおい、雨上がりの石畳、ワイングラスに反射する夕陽、白いシャツとヘルメット。

たったの1ヶ月が、1人の人間にこれだけ大きな影響を及ぼすことを私は知っている。2005年の7月、それは、私とあの街だけが知っている秘密である。

お父さんの回復、12月の疲れ

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