村上春樹の作品は全部読んできた。ひとつを除いて。それが「アンダーグラウンド」だった。地下鉄サリン事件の被害者へのインタビューを集めたものだ。読むと絶対につらくなると思ったし、どうも向き合えなかった。あの厚い本を見るたびに「これは無理だ」と、読むのを避けてきた。
6月末、電車で出かけるので本を読む時間がたくさんある、という日があり、kindleで何か買ってから行くことにした。迷ったけど思い切って、ついにアンダーグラウンドに手を出したのだった。
最初の「千代田線」から読み出したが、乗っていた電車もまさに千代田線で、通った駅も「霞ヶ関」で、なんだか動悸してきた。気持ち悪くなってきて、すぐにでも地上に出なければと思った。こんな街に住んでられない、と。
その後、いつの間にか次々と読んでしまった。事件そのものよりも被害者の人々にフォーカスした本だ。読んでいくうちに、最初に本に対して抱いていたイメージが変わってきた。読み始めてよかったと思っている。本当に少しずつ読んでいるのでまだ「丸の内線」でとまっているところだ。それにしてもすぐれた作家だ、とつくづく思う。
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涼しい日々が続いている。湿度は高いものの、大雨が降るわけでもなく、こんなに快適に過ごせていいのだろうかと思うくらいだ。いつの間にか7月が半分終わっている。あと2ヶ月もすればもう秋が来ているのだ。