きょうは代休。お昼を食べにでかけたら記録に値する興味深い出来事があった。赤ちゃん連れの多いオーガニックカフェ。昼はビュッフェ形式。私が案内されたのは一番奥の席。両隣にはすでに客がいて食事をしていた。二組とも、女の赤ちゃんを連れた母娘ペア。つまり、女3世代ということ。平日の客のなかにはこのパターンは多い。(実際、私も母と息子と来たことがある。)見たところ
赤ちゃん…1歳前後
その母…30歳前半
さらにその母…60前後
2組とも同じような世代の人たちだった。
席につくとやたらと視線を感じるのでどうしたのかと思った。もしかしたら片方が芸能人とかそういうことか?不思議に思いながら聞こえてくる会話に耳を傾けると私の左から
「おばあちゃんてこと?」「たぶんそうよね」「親が変だとさ、子どもも変に育つよね」「まあそうね」「あの子もそうなっちゃうのかな、かわいそうに」「ねー。」
と聞こえてくる。
「だってさ、サラダの…」「ドレッシングを…」「写真撮って…」
などなど、このへんは断片的にしか聞こえてこない。これだけ聞いて、私がくる前に、この二組には何らかの問題があったらしいということを察した。
「しんじられない」「家がおかしいとこどももそれがおかしいって気づかずに育つからさ、そうなっちゃうんだよ」「ほんとひどい」「ねー」
左の母娘の会話は続く。内容がこんなにしっかり聞こえるということは、まさか。そう、そのまさか、隣(右)の母娘に聞こえるような声でわざと言っている。相当不快な思いをしたのだろう。それにしても、あまりにもあからさまで、こちらも耳を疑うほどだ。
しばらくして右の反撃が始まった。
「相手にするだけ無駄だからさ」「そうね」「バカの相手なんて」「ほんとほんと」
これまた左に聞こえるようにはっきりとした声で言っている。近くにいた男性が振り返ったのは、何気なくではなくおそらくこの内容が気になったからではないか。
しかしまあ、間にはさまれた私は居心地悪いのなんの。逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。食べ物が目の前にあるので去るわけにはいかない。気持ちだけ外に走り出している。移動できるか聞こうかと思ったけど混み始めていて空いている席はなさそうだ。なによりも、ここで私があからさまな移動でもしたらこの母娘x2に何か言われるかもしれない。
しゃべりながらもこの4人(いや、6人?)の女、視線が行き交う。お互いをチラチラ、ときには刺すように見る。侮蔑するようなまなざし。
(怖い…)
いたたまれなかったので持ってきた本を開いた。「私は無関係です」ということを全身で示そうとした。
そのすぐあと、私からみて右斜め前に、別のお客さんがきた。3人家族。父、母、子。ベビーカーなので、ベビーカーごと席にくっつけて食べることにしたらしい。
それを見て右の娘「ベビーカーだったら入らないよね。ベビーカー置いてきてよかった〜」
左を見ると、左の赤ちゃんはベビーカーで来店している。
2分とたたずに左の娘「今のひどいよね、ベビーカーで来てる人みて、ベビーカーだったら入らないよね、とか。性格悪すぎだよね」と左母に同意を求め「ほんとびっくり、性格悪いね」と、これまた相手にしっかり聞こえるように言う。
この人たち、このまま直接言い合いを始めたらどうしようか、とふと思った。韓国だったらケンカしているだろうか。しまいには髪の引っ張り合いになるだろうか。
イタリアだったらおそらく問題が起きたその場で二者ともガーーッと意見を怒鳴って主張して、所要時間が3〜5分くらいで終わるだろう。十中八九、食事が始まるころには無かったことになっている。(そのくらいじゃないとあの国では生きていけない。)
いろいろ考えながら、両者の身なりを観察してみた。右のほうが母娘とも化粧が濃く、着ているものも派手だ。右娘の靴が見えたのでよく見てみたらLとVのロゴ。ルイ・ヴィトンか。手元にはモンクレールのダウンジャケット。どちらも10万では買えない。右母は白と黒のワンピース。タイトで動きにくそうだった。いっぽう左の母娘はごくふつうの身なりだったので特に記憶に残るものもない。そのくらい普通。
左右とも娘のほうが私の向かい側なので顔がよく見える。ふと2人が小学生〜高校生だったころを想像し、いわゆる「女子」のイメージが被り、まあこういうことは簡単にありうるなと思った。
しかしなあ、女ってものは。この両者のなかではきっとどっちの赤ちゃんがかわいいか、も競っていたに違いない。この両者の赤ちゃんの顔を見ることができなかった。顔を動かすと娘たちと目が合いそうで怖かったので。幸せに育ってほしい。
その後どうなったかはわからない。よからぬことが起きる前に店をあとにした。やれやれ。