母が骨折してからもう2週間が経とうとしている。
ある土曜の午後、仕事中に携帯を見ると妹からの着信があった。
母が椅子から落ちて骨折をしたという。
父親と電話で話しながら「いやまさか冗談だろう」という、ほとんど確信と言ってもいいような気持ちがあった。
なぜって今までそんなことは起こったことが無かった。両親とも、怪我も病気もしたことが無かった。
だからにわかには信じがたかった。
それが今度ばかりは冗談ではなかった。
入院することになったと聞いてすぐに、お菓子でも送ろうと考えた。
なぜだかすぐに「グラマシー・ニューヨーク」を思いついた。
私自身は数回しか食べたことが無かった。
だが間違いなく美味しいという確信があった。
美味しいものなら他にもあるだろう。
しかし、郷里には無さそうなものを送りたかった。
幼い頃、横浜に住んでいるおばから時々お菓子が送られてきた。それはヨックモックだったり、メリーのマロングラッセだったりした。
一緒に住んでいた彼女の両親、つまり私の祖父母に宛てられたものだったが、いつも皆それらを楽しみにしていた。
送られてくるお菓子はなんだか「都会のにおい」がしたものだ。
田舎を出たことの無い私にとっては、たいへん珍しく、素敵で、ワクワクするものだった。
こんな美味しいのは、ここには無いね、とか、なんだかおしゃれだねとか言いながらむしゃむしゃ食べたものだった。
グラマシー・ニューヨークにしようと思い立ったのも、そういう自分の記憶があってのことだろう。あの家にめったに無さそうなものを送ろうと思った。
小さな自分がそこに居たとしたら、箱が開いた瞬間「わぁー」と言って喜ぶような、そんなものを選んだのかもしれない。
ほとんど無意識のうちに。
選んだのは「ニューヨーク・ライブラリ」。
これがまた、たいへん好評だったらしい。
まだ自分で食べたことは無いので、今度はお土産に持っていって自分も食べよう。
Wednesday 21 December 2011
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