休まなければいけない。心身ともに具合の悪い生徒が何人もいて、特に今月はその子たちの話をたくさん聞いてきたのだがそうしているうちに自分も不調に陥ったのだった。「やばくなる前に、手をうつんだよ」などと言っていたら、その言葉、そっくりそのまま自分に返ってきた。休まなければ。
本当にやばくなる前に誰かに言えたらいいのだろうけど、そういうときに「弱い人だと思われるんだろうな」という考えがよぎり、結局言えない。今回も言えなかった。しかし言えない代わりにスーッと休んだ。欠勤はしなかったが午後休とか在宅勤務をうまく使って、心を横たえられる日を作ろうとした。
というわけできのうは待ちに待った何もない土曜日。合気道の朝稽古に行った。この季節の朝稽古はさわやかだ。特に稽古後。こんなに気持ちのいい時間帯があったのかと思う。いや、昔から朝型だし、朝稽古に参加するのは初めてではないのだが、そもそも好きな初夏に、汗をいっぱい書いて7時すぎに自転車で帰宅するのは本当に気持ちがいい。朝稽古に行くときは帽子とパーカーを身につけているのに、帰りは開放感でいっぱいでTシャツとサンダル、サングラスだけで風をきって帰る。本当に気持ちがいい。
何もしないで過ごそうと思っていたらママ友から「ブルーインパルスを見に公園に行きませんか」の誘いがあったので、行ってみることにした。電車に乗っていかなければいけない公園で、しかもブルーインパルスは税金の無駄遣いですよねとかちょうど前日職場で話していたところだったので、わざわざそのために遠い公園にいくのは正直なところ面倒ではあったがこのママ友からの誘いは、のってみると必ず「きょうは行ってよかった」と思えるのでWhy not精神で受け入れた。
公園で待ち合わせをしたらおもいのほか早く着いてしまった。暑い中、結構待った。あとで知ったのだが、その間、そしたらあちらは「公園に行くのが面倒になったのでもっと近くで待ち合わせたい」という内容のLINEをわたしに送っていたらしい。しかしながらわたしはスマホを持たず家でしかLINEが見られないので、まさかそんなことになっているとは何も知らなかった。
結局2時過ぎにママ友現れる。会えてよかったです…。
子と2人で鬼ごっこをしていたところ、小学生の女の子が2人、「いっしょに遊びませんか」と声をかけてきた。これは驚きだった。
「いいよ!」と答えて4人で氷おにを始めた。
結果から言おう:おには負けました。人生でここまで本気で走り回ったのはおそらく30年ぶりだったと思う。この子たち、あとから聞いたら小6だそうだ。子と走り回るだけでも息が上がり汗だくだったというのに、さらに体力の限界を試された。この女の子たちの身体能力ときたらもうカモシカとかうさぎとか、そういう跳ねる動物を思い出させるレベル。脚が長い。細い。無駄な肉がひとつもない。滑り台の上から飛び降りる。こちら40歳。走っても走ってもどうしてもつかまえられない。全速力で走り続けた。時間が永遠に思えた。そのうちに1人が言った:
「おに、かわりましょうか?」
ゼエゼエしながら「は、はい、おねがいします…」と答えた。無理だった。朝稽古ほどではないがそれに近いくらいの汗がぽたぽたとしたたり落ちた。普段、自分のことをおばさんなんて思わないし決して言わないのだがこういうときだけ都合よく「おばさん無理」なんて言いたくなる。まあ言わなかったけど。
とことん、「小学校の先生すげえ」と思った。体育の時間だけじゃなくて休み時間も外にでて遊ぶ先生たちいますよね、あれ、当たり前だと思ってたけどちょっとまあ並大抵のことではないです。
その間、どうやらブルーインパルスが2回くらい上空を通過した。「あ、飛んでるねえ」と言ってみたものの子供たちのフォーカスは完全に地上にあり、正直なところわたしもどうでもよくなっていた。「税金の無駄遣い」はごおおおおという上空からの音とともに飛び去っていったのだった。
全速力で駆け回ったその数時間後、家でシャワーをあびてリラックスしたら頭につまっていた栓がとれたかのように気持ちがよかった。やっぱり体を動かすのは最高なのである。これに勝るものはない、とつくづく実感し、あの女の子たちに心から感謝した。