Wednesday 13 May 2020

初夏、午後3時半、消防学校(後半)

消防学校への道は長かった。大きな道路を通るからかかるストレスも多い気がする。子どもは、わがまま言った末に願いを叶えてもらっているというのもあるだろう、おとなしく後ろに座っていた。今まで通ったことのない道を通るので「これなに」と控えめに聞いてきたりした。太陽は私たちの真後ろにあった。どんどん東に向かって進んでいく。

昔よく通っていた地域なのでなんとなく土地勘がある。「もうすぐだよー」と言ってある道に入っていった。門のようなものがある。いくつか消防車が見えるがそれほど多くないしちょっとイメージも違う。子供も自転車から降りてみた。そのうち子供がもじもじし始めた。「おしっこ?」というと例によって「ううん」と答える。「おしっこでしょ、ちょっとさっきのコンビニまで戻ってトイレ借りよう」と言うと納得した。後ろに乗せてコンビニに戻ると、なんとコロナウイルスのためトイレ使用禁止と書いてある。仕方ない。「じゃあもうそのへんでするしかない」というと「だめ」と言う。いつもの流れである。

どうしようもなくてまた自転車に乗せて敷地の周りをぐるっと回ることにした。塀が高くて中が見えない。それでもあちこちに赤い消防車が見える。「ほら、あるねえ」と言いながら一周。

もう帰ろうか、と言うとまた同じところに戻るという。なんだかぐったりしてきた。「閉まってて中には入れないというところを見にいく、って言ってたじゃん、だからもうこれでいいでしょ?」と言うと「また違う消防車みる」と言う。仕方なくまたもとの門の前まで行ってみた。

それにしてもイメージと違うなと思いながら、ふとそこを通りかかった消防士(と思われる)に聞いてみた:

「一番消防車がよく見えるばしょはどこですか」

すると、

「うーん、あっちのほうかな」と指差したのはなんと我々が見ていたのとは違う方向。あ、あっちなんですか、と言うと「こっちが工場で、あっちが学校」とのこと。聞いてよかった。工場だけ見て帰るところだった。

横断歩道を渡っていってみると、あった。そこにはざっと数えて10〜12台の消防車が並んでいる。消防車のグラウンドみたいな感じ。「あらっ?!あそこにもあるよ!」と嬉々としながら子どもがフェンスにしがみついている。よかった。もうこれだけで連れてきてよかったと思った。

しかし、やはりもじもじが止まらない。「もう、ここでおしっこしていいよ」と言ってもあいかわらず「ダメ」と返す。「じゃあここでおしっこしたら帰りにアイス買ってあげる」と言うと、無言で納得し、そこでしゃーっとおしっこした。これでこっちも一安心である。

20分くらい見ただろうか。帰ることにした。まっすぐ、西陽に向かって進む。まぶしい。これが4時半過ぎ。最近「ピノ」(6こ入りのアイス)のファンになった子どもはピノを買うと言い張ったが立ち寄ったローソンで見つけたのは6個入りどころか24こ入りで、こんなの要らないよと言ってセブンイレブンへ行った。そこでピノはなかったが代わりにアイスの実を買った。ぶどう味。

二人で半分した。無言で食べた。なんてことないんだけど、そしてストレスも多かったけど楽しかった。まぶしい道路とか、木陰のフェンスとか、蒸し暑さとか、こどものヘルメットの色とか、茂みに隠れておしっこさせたこととか、アイスの実のぶどう色とか、ひとつひとつきっとあとから思い出すんだろうなと思う。思い出して切なくなるんだろうな。写真には撮ってないけど頭から離れないシーンというのがいくつかあって、そういうのの一つになる気がする。

ありがとうとカルボナーラ

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