合気道の話。最近、あらためて感心したことがある。
85歳の門人がいらっしゃる。85である。まさかそんな歳だと思っていなかった。というのも、歩き方も若者とまったく変わりなく、ふるえひとつない。なんと合気道を始められたのが定年退職後だそうだ。69歳で始め、それから今まで毎日稽古に参加しているという。私が合気道を始めた時、私は週に3回ほど通っていたが、その当時も必ず毎回お会いしていた。それもそのはずだ。毎日なのだから。しかも69歳なんて何に対しても「もう引退」と思う歳ではないのか。仕事は引退しても、彼は自分自身から引退しなかった。
この方、とにかく気さくで、爽やかで、まったく偉そうでない。この謙虚さは一体どこから来るのだろうと思ってしまう。いつもやさしい。高齢だからと言って特別扱いする必要がまったくない。周りの人(といっても一番若いのは中学生)とまったく同じ動きができる。そして体のどこどこが痛いとか、きついとか、そういうことを言われることがまずない。
先日、彼を紹介したビデオが道場で作成された。10分間くらいのビデオだが、うなってしまうほど感心した。レジェンドだ。生ける伝説。行動で示すとはこういうことだ。多くを語らず、毎日ただ稽古に参加し続ける。ビデオのなかで「自分に負けない」ということを語っておられた。
私は85歳になったとき、誰にも頼らず、自分で歩けるだろうか?自分に負けずに生きられるだろうか?