先週からずっと気になっていたことがあった。それは、ウフィツィ美術館の予約をするべきか否か。ネットで予約しようとしたら2週間先まで売り切れ状態だった。うーむ。行きたい。でも列には並びたくない。
で、先週の木曜日のこと。
学校が終わって帰ろうとしていたちょうどそのとき、壁に「ウフィツィの予約、ご相談下さい」みたいな案内を見つけた。
事務にいたロシア人のお姉ちゃん(タチアナさんという)に聞いてみたところ希望日と時間を聞かれたので、「できることなら今週の土曜なんだけど、ウェブサイトでは全部売り切れなんです」と答えた。すると「分かんないけど1人ぐらいはいけるかもよ〜 電話してその結果を明日知らせますね〜」と言われた。日本だったらその場ですぐに電話してその場で知らせてくれるだろう。まあいいや、別に急いでいることでもないし。今は今でやるべき別の仕事があるだろうし。
翌日。
私:「昨日の件どうなりましたかね」
タチアナ:「完璧でした〜」
なんと、土曜の朝9時半に予約が取れたというのだ。ウェブサイトでは全部売り切れだったのに??驚いたけど本当に完璧だったので嬉しかった。
イタリアは大きなシステムどうし以前に個人間で取引が行われることが多い。昨日も友達が"Basta conoscere la giusta persona(正しい人と知り合っているだけでことがうまく進む)"と言っていた。この場合は個人というよりは、地元の学校と美術館の関係であり、さらにインターネットではなくて直接、イタリア語での電話による予約なのだから、より信頼関係がある。ウェブサイト予約もその辺はフェアになってないといけないんだけど、まあイタリアだから仕方ない。
9時半少し前に着いたら、やっぱり長蛇の列だった。しかも土曜日だし。予約は4ユーロかかるけど、その価値は十分にある。通常のチケットが12.5ユーロ。初めてこの美術館を訪れたのは2005年だったが、そのときは€10以下だった記憶。
今のところ、どの美術館も入場料が値上がりしている。一年に€1ぐらい上がっているのかもしれない。
さて、美術館内は観光客でごった返していた。みんな興奮状態にある。ぶつかったり、床に座ったりしていて私もかなり神経が尖っていた。
今回は音声ガイド無しにした。これで3回目か4回目のウフィツィである。最初のほうから順番に見て行く。ルネサンス黎明期の祭壇画から始まる。
Simone Martiniの受胎告知。いやー、なんとも言えませんね、このマリアの表情。何度見ても面白い。目からビームみたいなのが出てて、それが言葉になってる。いわゆる「ルネサンス」という感じの人間らしくて柔らかい作品はもちろん好きなのだが、個人的には中世の固い、かつコミカルな感じがとても気に入っている。タペストリー然り。
ミケランジェロのsacra famiglia(聖家族)。これ、初めて見た時は涙出るほど感動したなあ。もう10年前だけど。教科書とか本で毎日のように眺めていた作品が目の前にあるってやっぱり嬉しいものです。今となってはそういう新鮮な感動からだいぶ遠ざかってしまっているのだけど。
これはローマの彫刻だそうで。お尻に目を奪われるんですが、実際のところ西洋人のお尻ってほんとにこんな感じなのよね。
ボッティチェッリのLa primavera(春) は、あらためて見るとかなり大きい。ガラスがかかっているけど、果たして10年前はガラスなんてあっただろうか?
とにかく精密に描かれてある。
ちなみに現在、ウフィツィのメインとも言える10〜14室が工事中かなんかで閉まっていて、ボッティチェッリだけ移動して別の部屋に展示してありました。
これの前で記念写真を撮る人たちがわんさかいて、本当に迷惑だと思った。
いつも思うんだけど、美術館に来る人たちは「あの有名な絵を見た」という事実が欲しくて来るんだろうか。それとも本当に絵画に興味があって来るのだろうか。
もちろんどっちもありだし、何の否定もしないんだけど、40人くらいのツアーでどどーっと入って来てやたら大きな声で解説したり、ひたすら美術館内をかけずり回って(記念)写真(だけ)をパシャパシャ撮る某国の人たちなんかを見ると腹立たしいと同時に悲しくなります。私にとっては、例えば食べ放題に行って、元をとるために食べまくる人と同じくらい醜い。そういう人たちに限って、彫刻に触ったり、フラッシュ撮影がだめだといくら言われてもフラッシュをたいたりする。普段から芸術に接していない証拠とも言えるかもしれない。文化的成熟度が低いというか。
話変わって。
ロッソ・フィオレンティーノという画家がいる。私は10年前にこの美術館を訪れるまでこの画家のことは知らなかったのだが、描かれた天使に一目惚れしてしまった。
今回また会えたというか拝めた記念に、このリュートをひく天使のマグネットを買って帰りました。
下の2枚は今回初めて見たもの。あまりにも面白かったので撮った。狩りの前と後、らしい。前後くっつけて展示してある。
メディチ家の肖像画がずらっと並んでいる部屋があるのだが、その中の一枚。これを見るたびに、道端でよくこういう顔の人歩いているなあと思う。ほんとにそっくり。昔からイタリア人はこういう顔が多かったんですねきっと。
そしてラファエッロ。
何年も前に、この肖像画を、偶然にもヴェネツィアの美術館で見たことがある。ウフィツィから出張中だったのだ。これも当時、吸い寄せられるように虜になった。それまで特に注目もしていなかったものが、現物を見たとたんに虜になってしまうことがある。例えばシャガールの「誕生日」もそうだった。(もちろん逆もあるけど。)こういうところにやっぱり本物を見る意味があるんだと思う。ラファエッロ、それにしても美しい。