Wednesday 10 August 2016

逆子レポート(4) 36週〜37週

◆36週

外回転が決まってからは鍼灸の頻度も減った。8月1日からのこの週はとにかく暑くて、外に出るのもウンザリするくらいだった。おかげさまで、というわけでもないが逆子のことで頭を悩ませることも少なくなった。回ってないのは自分でも分かっていたし、外回転の日が近づくにつれて、はっきり言うと自然に回ることへのあきらめは大きくなっていった。みぞおちあたりにある頭をしっかり撫でながら「びっくりするかもしれんけどね、がんばろうね」と言い聞かせていた。私自身というよりは子どもにとっての一大事なのだ。天地がひっくり返るわけだから。そうやってだいぶ覚悟ができていた。地道に家でお灸もしていたし、寝る前に音楽をきかせたりもしていた。

「外回転なんてきいたこともないし、そんなに危険なことをするくらいなら帝王切開を選ぶ」と相方の家族が言う。そう言われるとすごく不安になった。本当にこれで間違ってないんだろうか、と自分に問いかけた。でも、もはや任せるしかなかったし、信じるしかなかった。

ちなみにこの1,2週間特に食欲が無かった。精神的なものというよりは、胃の圧迫によるものだと思う。たとえば納豆を1パック食べただけで「うぷっ」とするくらい。横になっているとその日に食べたものが逆流してくるような感じ。したがって逆子体操どころではなかった。おかげで、というべきかどうか、体重はずっと増えなかった。

◆37週

前日からソワソワ、緊張して仕方なかった。暑いのもあるけどよく眠れなかった。あらためて病院からもらった資料を読むと、やっぱり初産の人は成功率が低いし、全体としても成功率の高い術とは言えない。ストレスいっぱいの状態で入院の準備をした。

外回転当日、早めに起きた。食事は前日までで、飲み物は当日朝8時まで、しかもお茶か水かOS-1のみという指定があった。麦茶を飲んでしのいだ。そもそも前日の夜もかろうじて食べられたのがあんパンのみだったので、もうフラフラだった。朝から緊張とストレスがすごい。相方は優しくしてくれるのだがなにもかもがウザく、イライラする。あまり覚えてないけど笑顔の1つも見せられなかったと思う。不安だったのだ。要は。

9時までに来るようにと言われていた。歩くのが遅いのもあり、結構ギリギリに着いた。入院手続きをすませてから、売店で入院セットを買う。診察。内心と超音波。やっぱり骨盤位。病室に案内される。今日の手順を説明されて、着替えて横になり、点滴を打たれる。子宮を柔らかくする薬。それと同時に麻酔科の医師が来て説明。同意書にサイン。

あれよあれよという間に「50分入室です」という電話。私はてっきり、ほかの手術とかもあって結構待つことになるのかと思っていたがかなりスムーズにすすんだ。50分というのはおそらく10時50分のことだったのだろう。

ベッドに横になったまま、相方と別れてエレベーターで手術室に運ばれる。そう、手術室なのだ。こんなに本格的なのは初めてだったので、ものすごく緊張した。ものすごく。重病でもなんでもないのに、これから手術をするのだ。

相当な数のスタッフがこれに関わっている。手術室に入った時点で6人はスタッフがいたと思う。看護士、産科医師、麻酔科の医師、など。ベッドから手術台?に移された。かかっている音楽は…ミッキーマウス・マーチ。「いつもこれなんですか」と尋ねると「いろいろありますよ」と言う。そうかここには子どもたちもやってくるのだ。大人の私でさえこんなに不安がっているのに、子どもは耐えられるのだろうか。つらいだろうなあと思った。

着ていたローブを全部とって、バスタオルをかけられた。それをガムテープみたいなので肩にくっつけられる。背中を丸めて、さて麻酔。

緊張で手に汗。呼吸を整えた。普段からyoutube見ながらヨガやってて良かったと思った。さされているなと思ったときには大きく息をはいた。特に指示は無かったけど。

確かに痛かったけど、鍼灸で慣れているせいか、それほど痛みは感じなかった気がする。鍼灸は、鍼のサイズが太くなって以降「あ痛っ」と思うことが多くなってきていてあのビビりが日常化していたおかげで、麻酔もその一部みたいにとらえられた。結果、スムーズに麻酔がきいてきた。じんじんと、両脚が暖かくなっていくような、そんな感じ。「貧血のときみたいな感じ」と言われてなるほどその感じはします、と答えた。血がなくなっていくような感じ。

仰向けになって、両手を広げる。キリストの磔みたいなかんじ。胴体の載っている台自体は細いけど両手用の台もある。十字架。

痛みという感覚は無いものの、触られている感じはある。1人、女性の医師が形を確認しているのが分かった。「触っているの分かりますか」と言われて「はい」と答える。結構強く触っているらしいがそれは分からない。

「もしかしてもう回してるってこと?」と思ったところで、男性医師が入ってきた。やたらと陽気な人だった。挨拶をされて、これから開始する、ということだった。

2人がかりで回す。回している様子は分からないようにタオルで小さなカーテンみたいなのが胸の上あたりに設置されている。だけどしゃべっている内容は分かる。「これがおしり」とか「はずれない」とか「はずれた」とか聞こえる。相当苦労しているのが分かった。「これは大変だわ」「う〜ん」と医師が言うので、これもしかしたら無理なのかなと思った。目をつぶった。だめでもいいや、と思うものの、ここまできたんだからやっぱりうまくいってほしい。この人たちを信じようと思った。

その間、ほかのスタッフは私の手を握っててくれたり、周りにいて楽しい話を続けている。私もそれに答える。おかげで気が紛れる。

私が思ったのとは違う方向に回転させているのが分かった。麻酔科の先生が「もう半分くらい回りましたよ」と言う。「ああ良かったです」と、心からの一言が出た。そのあともかなり強くおなかをつかまれているのが分かったのだが、痛みはまったくない。私の身体をほかのスタッフが支えている。

たぶん15分くらい経ったところで「はい回りました〜」と言われた。よかった。本当によかった。「ありがとうございます」と言った。ほっとした。本当の勝負はこれからだということは分かってはいるけど、それでもずいぶんと楽になったし呪縛(と言ったら言い過ぎかもしれないけど)から解放されたような気がした。相当苦労されたようで、男性医師が「これってもう3000gくらいあるよね」ともう1人の医師に聞き「いや、2400ですよ」と答えると「えええ」と驚いていた。

スタッフみんなで私を抱えて台からベッドに「せーの」で移動させてくれた。「よかったですね〜」と言われながら、そのままエレベーターの方へ。ひたすら「ありがとうございます」を繰り返した。看護士がベッドを押しながら、誰かに「成功でーす」と言うのが聞こえた。めでたい。本当に良かった。

(つづく)

ありがとうとカルボナーラ

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